「相続登記をしていないと過料が来る」というけれど、具体的にはどのような流れになってる?

この記事の編集者

COM事務所代表

司法書士 小牟田 毅

司法書士法人COM事務所 代表司法書士
福岡県司法書士会所属

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  • 「相続登記をしてないと過料を払う必要がある」このこと自体は、最近ではよく知られるようになってきたように思えます。
  • しかし、「具体的にどのような流れで過料に至るのか」までご存じの方は、まだ少ないのかもしれません。
  • 相続のような重要な問題は、根拠となる法律や制度の仕組みを、順を追って確認していくことが大切です。

まず、相続登記の申請義務は「不動産登記法」に定められています

 相続登記の申請義務は、不動産登記法という法律で定められています。

不動産登記法第76条の2第1項
所有権の登記がある不動産の所有権を相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。

 ここで注意しないといけないのは上の赤字部分で、相続が開始した(例えば自分が相続人になったことを知った)というだけではなく、そのうえで「不動産の所有権を取得したことを知った」ことも、相続登記の義務を履行するための要件に入っていることです。

さらに、この義務に違反した場合の制裁についても、同じ不動産登記法の中に定めがあります。

不動産登記法第164条第1項
第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第七項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項若しくは第三項から第六項まで、第五十一条第一項から第三項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十条第二項、第七十条の二、第七十一条の二第一項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項に規定する申請をすべき義務がある者がその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。

 条文の中に多くの号がまとめて記載されているためかなり読みにくいですが、青字部分のが相続登記の申請義務の過料に関する条文です。つまり、この義務を怠った場合、10万円以下の過料の対象になる、ということが法律で定められているわけです。

過料はどのような手順で科されるのか

  「義務を怠ったら即座に過料が科される」というイメージを持たれている方もいらっしゃいますが、実際には、いくつかの段階を踏む仕組みになっています。

 法務省Webサイト内の「相続登記の申請義務化について」によれば、過料に至るまでの流れは次のとおりです。

登記官は、相続登記の申請義務の違反を把握した場合、違反した者に対し、相当の期間を定めて相続登記の申請をすべき旨を催告します。催告したにもかかわらず、正当な理由なくその期間内にその申請をしなかった場合、管轄の地方裁判所にその事件を通知するものとされています(不動産登記規則第187条第1号)。

 これを整理すると、以下のような流れになります。

①登記官による催告
 義務に違反していると把握された場合、登記官から「期限内に登記の申請をしてください」という催告(書面での通知)が行われます。

②期間内に申請がされない場合
 催告された期間内に、正当な理由なく登記の申請がされなかった場合、登記官は管轄の地方裁判所にその旨を通知します(不動産登記規則第187条第1号)。

③裁判所による過料の裁判
 通知を受けた裁判所が、要件に該当するかどうかを判断し、過料を科する旨の裁判を行います。

 つまり、いきなり裁判所から過料の通知が来るわけではなく、その前段階として、登記官からの「催告」というステップが必ず置かれているということです。

そもそも、登記官はどうやって義務違反を知るのか

 ここで気になるのが、「登記官は、すべての相続人について、義務を果たしているかどうかを調査しているのか」という点です。

 この点について、法務省Webサイト内「相続登記の申請義務化について」は次のように説明しています。(※通達:法務省民二第927号令和5年9月12日)

登記官は、次の(1)又は(2)を端緒として、相続登記の申請義務に違反したと認められる者があることを職務上知ったときに限り、申請の催告を行うものとされています。

(1)相続人がある不動産について遺言の内容に基づく所有権移転登記の申請をしたが、その遺言書には別の不動産も登記申請した相続人に相続させる旨が記載されていたとき
(2)相続人がある不動産について遺産分割の結果に基づく相続登記の申請をしたが、その遺産分割協議書には別の不動産も登記申請した相続人が相続する旨の記載がされていたとき

つまり、登記官が独自に戸籍や住民票の移動などを調査して、相続の発生や義務違反者を発見しに行くという制度にはなっていません。あくまで、他の不動産について登記申請がされた際に、提出された遺言書や遺産分割協議書の中に、まだ登記されていない別の不動産の記載があった場合、これが、催告のきっかけ(端緒)になるとされているのです。

「正当な理由」があれば過料は科されない

 催告を受けたとしても、それに応じなかったからといって直ちに過料になるわけではありません。先ほどの①〜③の流れのとおり、②の段階で「正当な理由」があると認められれば、裁判所への通知は行われません。

 前述の法務省のページでは、「正当な理由」として一般に認められる事情の例として、次のようなものが挙げられています。

  • 相続人が極めて多数に上り、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に多くの時間を要する場合
  • 遺言の有効性や遺産の範囲等が相続人等の間で争われているために相続不動産の帰属主体が明らかにならない場合
  • 相続登記の義務を負う者自身に重病その他これに準ずる事情がある場合
  • 配偶者からの暴力等の被害者であり、避難を余儀なくされている場合
  • 経済的に困窮しているために、登記の申請を行うために要する費用を負担する能力がない場合

 なお、これらに該当しない場合であっても、個別の事情に応じて正当性が認められれば、「正当な理由」があるものとして扱われるとされています。

相続登記義務違反による過料発生の流れのまとめ

段階内容根拠
義務の発生不動産の取得を知った日から3年以内に登記申請が必要不動産登記法第76条の2第1項
義務違反の発覚登記官が、別件の登記申請の中で職務上知った場合に限る法務省民事局通達  (端緒①②)
催告登記官が期間を定めて登記申請を催告法務省民事局の運用
裁判所への通知催告期間内に正当な理由なく申請がされない場合不動産登記規則第187条第1号
過料の決定裁判所が要件への該当性を判断し決定不動産登記法第164条第1項

 なお、実際に過料が科される時期は、2027(令和9年)3月31日以降になります。先に述べた相続登記の義務が定められた不動産登記法が施行されたのは2026(令和6年)4月1日であり、それから3年後が過料発生の日となるからです。

編集者より一言
ーEditor’s Wordsー

  • 条文や制度の根拠を順を追って確認していくと、相続登記で過料が実際に科せられる場面は、ある程度限定的なものになりそうだということが分かります。登記官が独自に全国の相続状況を調査しているわけではなく、別件の登記申請の中で偶然知り得た場合に限って催告が行われる、という仕組みになっているためです。
  • しかし、これは「過料が来なければ大丈夫」という話ではありません。相続登記がされていない状態は、過料の有無にかかわらず、義務を履行していない状態であることに変わりはありませんし、登記をしないままでいると、いざ不動産を売却したり、担保を設定したりする場面で支障が生じます。また、相続人の数が増えていくことで、後々の手続きがより複雑になっていくことも見逃せません。
  • 次回のコラムでは、「相続登記のすすめ方」をテーマに、具体的な手続きの流れを取り上げたいと思います。

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