遺言の基礎知識を具体例を交えて解説!
この記事の編集者

司法書士 小牟田 毅
司法書士法人COM事務所 代表司法書士
福岡県司法書士会所属
COM事務所は、遺言書の作成や家族信託の組成、相続後の手続き支援など、相続に関する各サポートに注力しております。相続でお困りのことがありましたらお電話いただくか、当Webサイトの「お問い合わせ / ご連絡」ページからご連絡ください。ご相談前に、料金の有無を必ずお伝えさせていただいております。
遺言のアウトライン
- 遺言は、自分の財産に関する最終意思を反映するための手段です。
- 遺言は民法で定める方式に従わないとすることができず、普通方式遺言は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、いずれも書面で作成します。
- 自筆証書遺言は1人で作成できますが、その方式には一定のルールがあり、方式不備で無効になることもあります。
遺言とは?
遺言(いごん、ゆいごん)とは、自分の死後に、誰に、どれだけ取得させるのか、といったような財産に関する最終の意思表示をするための手段です。故人(被相続人)が適法な遺言を遺すと、遺言に示された財産の分配は被相続人の法定相続人たちの法定相続分に優先されます。そのため、相続が発生した際には被相続人の遺言の有無の確認が重要な意味を持ちます。
遺言は「普通方式遺言」と「特別方式遺言」があり、普通方式遺言は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、その概要や良い点と注意点は下表のようになります(良い点と注意点は本記事編集者の私見になります)。
なお、特別方式遺言は病気で死が迫っている場合などに遺す遺言ですが、本記事では取り上げていません。
遺言の種類 | 概 要 | 良い点 | 注意点 |
---|---|---|---|
自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん/ゆいごん) | 遺言者が全文を自分で手書きし、押印し作成(ただし財産目録は手書きでなくても可) | 1人で作成できる | 費用がかからない方式や書き方の不備で無効になる可能性がある 原則、遺言者の死後に家庭裁判所で検認が必要 | 紛失の可能性がある
公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん/ゆいごん) | 公証役場で証人2名の立会いのもと、遺言者が公証人に遺言の内容を伝え、公証人が作成 | 原本は公証役場で保管されるため、紛失のリスクが低い | 法律の専門家である公証人が作成するので、方式不備となる可能性が低い証人2名に遺言の内容が知られる 費用がかかる | 証人2名の準備、公証人との事前のやり取りが必要
秘密証書遺言(ひみつしょうしょいごん/ゆいごん) | 遺言者が自分で作成した遺言書を封印し、公証役場で公証人と証人2名に提出し、公証人に遺言の存在を証明してもらう | 遺言書自体は1人で作成できる | 手書きでなく全文ワープロ打ちや代筆でも可書き方や方式の不備で無効になる可能性がある 遺言者の死後に家庭裁判所で検認が必要 作成後に内容を再確認するためには開封しなければならない(中の遺言書が自筆証書遺言の要件を満たしていれば良いが、そうでなければ遺言書は無効になる) | 紛失の可能性がある
自筆証書遺言は紙、筆記用具、印鑑(+朱肉)があれば作成できるため(封印は要件とされていません)、「手軽」「費用がかからない」「1人でできる」なため利用しやすいのがメリットではありますが、日付を記載していない、修正方法が誤っている、などの理由で方式不備となり、その結果自筆証書自体が無効になることもあり得ます。
遺言の具体例
遺言の具体例を図解していきます。
具体例を図解 (※押すと閉じます)
エフさんは、自分が亡くなったら、自分名義の自宅の土地と建物を、エフさんの奥さんとエフさん夫婦と同居しているエフさんの長男の2人の名義にすることを奥さんと話し合って決めて、遺言書を作成することにしました。

後日、エフさんは自宅で自筆証書遺言を作成しましたが、「付言事項」(※)の内容がなかなか思いつかず、日付を「令和 年 月 日」ととりあえず空欄にして保管しておきました。
※付言事項:法的効力はないが、遺言作成の経緯や親族に対する気持ちを伝える文章

それから10年後。エフさんは亡くなりました。エフさんの奥さんはエフさんの自筆証書遺言を持って司法書士事務所に相談に行きましたが、司法書士に「日付が入ってないから遺言は無効と思われます」と言われてしまいました。

そこで、エフさんの奥さんと3人の子供たちで遺産分割協議を行い、自宅はエフさんの奥さんと長男が2分の1の割合で共有することにし、その名義変更のための相続登記も終えました。

エフさんの奥さんは、自分の死後は確実に自宅を長男名義にしたいと考え、自分もエフさんのように遺言書を作成しようと思いました。しかしエフさんのような遺言書の記載漏れなどの方式不備を心配し、また高齢なこともあり全文手書きするのに不安もありました。

そこで、エフさんの奥さんは司法書士2名を証人として立会ってもらい、公証役場で公証人に公正証書遺言を作成してもらいました。公証役場で公正証書遺言の正本(※)を受け取ったエフさんの奥さんは、それを長男に渡しておき、やっと安心できました。
※公正証書遺言の正本:原本の全てを写した文書で、法的効力のあるもの

遺言を作成する際のポイント
- 自筆証書遺言は全文自書・日付・署名押印を行い、書き方に注意が必要
自筆証書遺言は「全文を遺言者が自筆」(ただし財産目録はワープロ打ちなどでも良い)「作成日を具体的に記載」「氏名の自書と押印」が必須であり、要件のいずれかが欠けると無効になることがあります。
また、不動産の特定がなされていない、財産を取得することとなる相続人の表示が曖昧(あだ名で記載など)など内容に不明確な表現があったら、その記載に関する遺言の法的効力は無効になる可能性が出てきます。遺言は親族だけでなく法務局や金融機関が内容を確認することが多いので、民法で定められる方式を満たし、その内容も明確になるように書き方には注意が必要です。 - 遺言は遺言者の死後に見つかるように保管する
遺言は、遺言者以外の第三者が内容を確認することが必要なので、遺言者の死後にすぐに見つかるようにしておくことが必要です。遺言者の死後遺言が発見されず、法定相続人の間で遺言の内容と異なる遺産分割協議が成立し、その後遺言書が遺されていることが分かったら遺産分割協議の効果に疑義が出るかもしれません。
具体例のように、遺言を作成したら、遺言で財産を取得することとなる相続人に遺言を渡しておくのも1つの方法です。 - 方式不備、内容不明確、紛失のリスクを避けたい場合は公正証書遺言を選択
公正証書遺言は遺言者から遺言の内容を公証人が確認し作成されるので、遺言の内容が不明確で無効となるリスクを相対的に減らすことができます。また、遺言の原本は公証役場に保管されるため、具体例で仮にエフさんの長男が公正証書遺言の正本を紛失しても、公証役場に対し交付請求を行えば再度正本を交付してもらうことができます。
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