イラストでみる相続ー寄与分の基本的な考え方と成立要件を解説ー

この記事の編集者

COM事務所代表

司法書士 小牟田 毅

司法書士法人COM事務所 代表司法書士
福岡県司法書士会所属

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寄与分のアウトライン

  • 寄与分とは、被相続人の財産の維持・増加に「特別な貢献」をした相続人に認められる取得分です。
  • 寄与分がある場合、全体の遺産からその分を差し引いて各人の相続分を計算します。
  • 寄与分が法的に認められるためには、民法上の要件をクリアする必要があります。
  • 寄与分の知識は、遺産分割協議を円滑に進め、親族間の無用なトラブルを防ぐのに役立ちます。

民法の寄与分の規定や要件をイラストを使って解説!

 寄与分は、民法904条の2に定めがある、被相続人の事業の手伝いや療養看護などによって、亡くなった人の財産の維持または増加に貢献した相続人に認められる、遺産の特別な上乗せ分のことです。 ここでは、寄与分の基本的な計算のやり方や、法的に認められるための要件について解説します。

民法第904条の2
1 共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に、その寄与分の額を加えた額をもってその者の相続分とする。

(第2項から第4項は省略)

民法904条の2第1項は、どのような場合に寄与分が認められ、それがどのように相続分に反映されるかを定めています。 この具体例をイラストと共に確認してみましょう。

エフさんの相続と「寄与分」のケーススタディ

 エフさんが亡くなりました。エフさんの奥さんは既に亡くなっており、相続人はエフさんの子である兄と妹の2名です。 エフさんの遺産は、亡くなった時点で現金・預貯金が合計3000万円ありました。遺言書はのこされていません。
 このきょうだい2名の法定相続分は2分の1ずつ(民法900条4号本文)なので、通常であれば3000万円を半分ずつ、1500万円ずつ分けることになります。

 

 しかし、妹はエフさんが倒れてからの5年間、自分の仕事を辞めて同居し、付きっきりでエフさんの療養看護(介護)をしていました。兄は、「妹が親父をつきっきりで介護してくれたおかげで、施設費用や外部の介護費用がかからず、親父の財産が減らずに済んだ。だから妹には500万円分の寄与分がある」ということを妹に伝えて、妹もこの額を適正なものと認め、同意しました。

  この「妹の寄与分500万円」がある場合、遺産はどのように計算されるのでしょうか。

寄与分の具体的な計算方法はどうするか

① みなし相続財産の算出

 まず、エフさんが亡くなった時の遺産3000万円から、妹の寄与分500万円を差し引きます(民法904条の2第1項)。

  • 3000万円 - 500万円 = 2500万円 この2500万円を「みなし相続財産」として、一度本来の法定相続分で分けます。

② 各相続人の一応の相続分の計算

 みなし相続財産2500万円に、兄と妹の法定相続分である2分の1をそれぞれ掛けます。

  • 兄の一応の相続分:2500万円 × 1/2 = 1250万円
  • 妹の一応の相続分:2500万円 × 1/2 = 1250万円

③ 最終的な取得分の確定

 最後に、寄与者である妹の一応の相続分に、最初に差し引いた寄与分500万円を「上乗せ」します。

  • 兄の最終取得分:1250万円
  • 妹の最終取得分:1250万円 + 500万円 = 1750万円

 このように、寄与分が認められると、妹は本来の1500万円より多く財産を受け取ることができ、その分兄の取り分は減少することになります。

寄与分が認められるための要件

 上記の例では、兄が妹の苦労を認めて同意したためスムーズにいきましたが、もし兄が「介護は子供の義務だろう」と主張して拒否し、家庭裁判所(調停や審判)で争うことになった場合、妹の主張がそのまま認められるとは限りません。 一般論になりますが、以下のような要件がすべて満たされている必要があると考えられています。

  1. 寄与分を主張するのが共同相続人であること

 寄与分を主張できるのは、被相続人の共同相続人に限られます(前掲 民法第904条の2第1項「共同相続人中に…特別の寄与をした者があるときは…」)。例えば息子の嫁や、”内縁関係”にある配偶者など、相続人以外の親族は寄与分の対象外です。
 また、共同相続人であっても、相続欠格者(民法第891条)・廃除された者(民法第892条)・相続放棄をした者(民法第939条)は相続資格を喪失するため、寄与分は認められません。

相続人以外の「特別寄与料」制度
 令和元年7月1日施行の改正民法により、相続人以外の被相続人の親族(例:息子の嫁)についても、一定の要件のもとで相続人に対して金銭請求ができる「特別寄与料」の制度が新設されました(民法第1050条第1項)。請求できるのが相続「分」ではなく金銭なので寄与「料」とされています。

  1. 親族間の扶養義務等を超える「特別の寄与」であること 

 民法は、夫婦間の協力扶助義務(民法第752条)や直系血族・兄弟姉妹間の扶養義務(民法第877条第1項)を定めています。これらの義務の範囲内で行われた行為は、「特別の寄与」には当たりません。
 とはいえ、ではどの程度の寄与が「特別」にあたるかは、判例は「療養看護の必要性 」、「身分関係から通常期待される程度を超えるか 」「無償又は無償に近い状態であったか」「継続期間」「専従性の程度」という基準を指摘していますが(東京高裁平成29年9月22日決定等 )、この基準をもってしても具体的な事案にあてはめて考えることは難しいと思います。
 ケーススタディと違い、きょうだい間で寄与分の有無や程度を争っているようなケースでは、この要件が最終的には家庭裁判所で決着することが多い理由の1つだと考えます。

  1. 被相続人の財産の「維持」または「増加」があること 

 寄与行為の結果として、被相続人の財産が実際に維持・増加したことが必要です(前掲 民法第904条の2第1項「被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者」)。
 精神的な支えになったというだけでは認められないことが多いと考えます。たとえば、病院に頻繁にお見舞いに行った場合であっても、それだけでは療養看護の寄与分は認められないとする判例があります(東京高裁決定 昭和57年3月16日参照)。
 「療養看護型」の場合は、「寄与者の行為によって、それがなければ必要であった療養看護にかかる支出を免れた」という事情が必要とされています。

 きょうだい間でお互いに譲歩して寄与分の額がスムーズに定まればいいのですが、きょうだいの中の1人が両親の近くに住んでいて。その流れの中で両親の面倒をみるために定期的に通う例や、両親と同居する例など、上記の基準をもってしても寄与分が認められるのか認められないのか、相続人は判断に迷う例が多いといえます。
 寄与分が発端となる争いを防ぐためには、遺言書の活用などが考えられます。

編集者より
ーEditor’s Wordsー

  • 寄与分の基本的な仕組みと要件を知ることで、遺産分割協議で感情論に陥るのを防ぎ、公平な話し合いを進めるヒントになります。

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