イラストでみる相続登記ー相続登記の基本的な考え方を解説!ー
この記事の編集者

司法書士 小牟田 毅
司法書士法人COM事務所 代表司法書士
福岡県司法書士会所属
COM事務所は、遺言書の作成や家族信託の組成、相続後の手続き支援など、相続に関する各サポートに注力しております。相続でお困りのことがありましたらお電話いただくか、当Webサイトの「お問い合わせ / ご連絡」ページからご連絡ください。ご相談前に、料金の有無を必ずお伝えさせていただいております。
相続登記のアウトライン
- 相続登記は、不動産の名義変更です。
- 相続が発生したら、実体上は不動産の所有権は相続人に移りますが、相続による名義変更は相続人が法務局に登記の申請を積極的に行う必要があります。
- 相続登記を行うことは法律上の義務なので、相続が発生して不動産を取得したことを知り、相続登記の申請をせずに3年経過すると、過料を受ける可能性があります。
相続登記とは?
相続登記とは、アウトラインで述べたように「相続の発生による不動産の名義変更である」と言うことができます。名義変更と言われたら、登記簿という帳簿や掲示板(のようなもの)の書き換えをするだけ、というイメージを持つ人もいるかもしれません。でも、名義変更を行う前提として、所有権という権利が(全員か一部の)相続人に移動していて、その過程を正確に登記簿に記録するのが相続登記です。相続人相続登記の意味を正しく理解するために、「権利を持つことができるのは何か」を出発点として順序立てて考えていくのも良いと思います。
少し難しく感じるかもしれませんが、よかったらお読みください。
民法3条1項には「私権の享有は、出生に始まる。」と書いてあります。一方、民法には死亡によって私権(権利)を失くすということがダイレクトに書かれた規定はありませんが、民法は死亡することにより権利を喪失することが前提の条文(例:死亡による相続開始を定めた民法882条)が多数存在し、「私権の享有は、死亡で終わる。」と言えます。
ちなみに、法人も目的の範囲内で権利を持つことができる旨が民法34条に書かれており、他に権利を持つことができる人などはありません。まとめると、日本で権利を持つことができるのは生存中の自然人(個人)と法人のみであることが分かります。
例えば、不動産の名義人が亡くなりました。法務局の登記簿はこの故人の名義になったままです。故人の遺言書はありません。この不動産の所有権は誰が持っているのでしょうか?
それはこの故人の相続人です。なぜなら死亡した人は権利を持つことができないからです。加えて、民法には死亡によって相続が始まる規定があり、相続によって財産を取得する人(法定相続人)についての規定もあります。このことから、この不動産の名義人はこの故人の相続人になります。
では、故人の相続人が複数名(配偶者と子供など)いる場合は、この不動産の所有権はどのようになるのでしょうか?
故人には奥さんと子供が3名いるとします。民法では奥さん(配偶者)と子(の全員)の相続割合は各2分の1とされていますので、この場合は奥さん2分の1(6分の3)、子がそれぞれ6分の1ずつになります。この不動産は、所有者が亡くなった瞬間に所有権が4名の相続人に移動し、各相続人は各相続割合に応じた持分をもつ共有の状態になります(共有は民法249条から規定があります)。
共有は、各共有者が持分に応じて共有物の全部を使用してよいとされており(民法249条)、各共有者は共有物(不動産)に対して権利を持っていることになります。
相続登記は不動産の名義変更ですが、相続登記のパターンは主に以下の2つがあります。
- 法定相続人の法定相続割合に応じ、法定相続人全員の名義にする(共有状態にする。遺産分割協議は必要なし)
- 法定相続人全員で遺産分割協議を行い、特定の相続人の単独名義(または一部の相続人の共有名義)にする
不動産を特定の相続人名義にすることは、4名の共有状態を解消することと同じことです。つまり、遺産分割協議により、特定の相続人が権利を取得し、他の相続人は権利を失います。相続登記のための遺産分割協議をする際には、このことを踏まえて行うことが重要です。
なお、仮に故人が不動産を特定の相続人に相続させる、という趣旨の記載がある有効な遺言書を残している場合は、故人が亡くなったらその特定の相続人に不動産は帰属します。有効な遺言による財産の配分は法定相続分に優先されるからです。有効な遺言がある場合は、法定相続人による遺産分割協議のステップがなく必要書類も少なくて済むので、相続登記をスムーズにすすめられることが多いです。
遺言書についての基礎知識はこの記事で紹介しています。
また、現在は相続登記は法律上の義務になっています。不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられていて(不動産登記法76条の2第1項)、相続登記をしないでいることは過料の適用対象になっています。
イラストでみる相続登記の具体例
イラストで相続登記の具体例をみてみましょう。
具体例を図解 (※押すと閉じます)
”査定額3000万円のマンション1室を、兄と妹の名義にしたい”
エフさんが亡くなりました
エフさんの財産は自宅のマンション1室とわずかな預貯金のみ
エフさんの相続人は長男(兄)と長女(妹)のみ
「お父さんの持ち家、どうする?」

エフさん名義のマンション1室は不動産屋さんの査定額では3000万円
”法定相続分は兄と妹で2分の1ずつ”

兄と妹は、”遺産分けの話し合い”を行いました
話し合いは、マンション1室を2人で共同で持って、時期をみて売りに出すか検討しよう、ということになりました
妹は「お父さんとお母さんの面倒をみてくれたから、お兄ちゃんの分は多めにしていいよ」と兄に言いました
兄は「じゃあ預貯金はお前が受け取れ」と妹に言いました
マンションの持分は兄3分の2、妹3分の1、に決まりました
2人は司法書士に相続登記の相談をして、”準備する書類”である戸籍1式、兄は住民票、妹は印鑑証明書
作成する書類は遺産分割協議書、との説明を受けました

2人は市役所でエフさんの出生から死亡までの戸籍、自分たちの住民票と印鑑証明書を取りました
そして司法書士事務所で“遺産分割協議書の内容を確認”し、サインして印鑑を押しました

司法書士は兄と妹から依頼されて、法務局へ相続登記の申請を行いました
相続登記は終わり、”マンション1室の名義は兄3分の2、妹3分の1に”なりました
まだマンション1室を売りにだすかどうかは決まってません

編集者より
ーEditor’s Wordsー
- 故人(被相続人)の有効な遺言書がのこされていない場合、法定相続人全員による遺産分割協議が必要になりますが、相続人は全員法定相続分に応じた権利を持っています。特に財産を多めに取得する相続人は、このことを踏まえて遺産分割協議を行うことが重要になります。
- 相続登記は、遺産分割協議の結果などの実態を反映するために行います。
- 相続登記の申請は法律上の義務なので、相続発生後は必ず行うことが必要です。
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