【2026年6月17日成立】「デジタル遺言」(保管証書遺言)のしくみと作成の流れをイラストで解説

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  • 2026年6月17日、「デジタル遺言」(保管証書遺言)を新設する民法改正法が国会で成立しました。
  • デジタル遺言は「全文手書き」「押印」が不要になる一方、口述確認など安全性を確保する新しい手続きが設けられています。
  • デジタル遺言の制度が実際に利用できるようになるのは、法律の公布から3年以内の施行の見込みです。
  • 本記事では、この新制度の基本的な仕組みと、予定されている作成の流れを解説します。

 

「自分で作成する遺言書は全文手書き」の時代が変わる

 これまで、自筆証書遺言には、財産目録を除くすべての内容を自分の手で書く必要がありました(民法第968条)。文字を書くことに負担を感じる方にとって、「遺言を残したいけれど、手書きは負担が重く難しい」という理由で遺言書作成を避ける方がおり、労力がかかることが遺言の利用が増えないことの理由の1つとされてきました。

 この課題を受けて、政府はパソコンやスマートフォンで遺言書を作成し、法務局のシステムに保管できる「保管証書遺言」(通称:デジタル遺言。本稿では「保管証書遺言」という正式名称を用います)の導入を進めてきました。そして、2026年6月17日に保管証書遺言の制度を導入する「民法等の一部を改正する法律」が、参議院本会議で可決・成立しました。 

 ただし、保管証書遺言の制度は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内の日から施行とされており、実際の施行までは一定の準備期間が置かれる見込みです。
 現時点ではまだ保管証書遺言は利用できませんが、施行に向けた制度の仕組みを今から理解しておくことには一定の意義があると思います。する制度として「成年後見制度」(民法)「(民事)信託」(信託法)があります。

 「保管証書遺言」とは何か

「保管証書遺言」は、これまでの自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言に加わる、4つ目の新しい遺言の方式です。

 パソコンやスマホで作成した遺言書を、法務局にデータ等(※1)で保管してもらう新しい制度です。民法第967条・第968条の2・第968条の3により民法に新設されることになりました。

※1 パソコンで作成した遺言書を書面にプリントアウトしたものも含みます。

種 類作成方法特 徴
自筆証書遺言全文手書き・署名押印(※2)手軽だが内容不備のリスクあり手書きの労力が必要
公正証書遺言公証役場で公証人が作成確実だが費用と手間がかかる
秘密証書遺言自分で作成・署名押印(※2)費用と手間がかかる内容不備のリスクあり
保管証書遺言(新設)PCやスマホ等で作成・(電子)署名手書き不要、法務局が保管

※2 新制度の施行により押印は廃止されます。

保管証書遺言の作成の流れ

 改正法案の内容をもとに、予定されている手続きの流れを整理します(手書きの遺言書でも保管証書遺言の制度は利用できますが、本稿ではワードなどのデジタル形式で作成するパターンを紹介します)。

 パソコンまたはスマートフォンを使い、遺言書の内容をテキスト形式で作成します。財産目録も含めて、すべてパソコンまたはスマートフォンで作成できることが特徴です。

ステップ1:遺言書データの作成(PCやスマホで作成)

 作成の過程で公正証書遺言のように公証人など公務員の介入はありませんので、遺留分への配慮が必要かどうか、相続人の範囲はどこまでか、法的に正確な表現になっているかなど内容の確認は、作成者自身が確認する必要があります。

📌 実務家からのポイント
遺言の作成がデジタル化されても、「誰に何をどのような割合で残すか」という遺言の内容をご自身で行うという点は変わりません。作成自体の負担は軽減されますが、内容の確認は問われるとも言えます。

ステップ2:マイナンバーカードを用いた電子署名(想定)

 作成したデータに、マイナンバーカード等を用いた電子署名を付与(※)します。従来の押印(ハンコ)に代わる手続きで、「本人が作成したデータである」ことを証明します。

 

 ※「署名またはこれに代わる措置として法務省令で定める方法」が本稿執筆時点では定まっていませんが、マイナンバーカードを使った電子署名等が想定されています。

ステップ3:口述確認(法務局の担当官の前で)

保管証書遺言では、法務局の担当官の面前またはウェブ会議において、遺言の全文を「口述」する手続きが設けられており、これによりなりすましや強要を防止する仕組みとなっています。

 保管証書遺言は「完全にオンラインで自己完結する」制度ではなく、法務局の担当官(または遠隔でのウェブ会議)による確認というプロセスが設けられています。
 これは、本人が自由な意思のもとで遺言を作成したことを担保するためのステップです。

 

ステップ4:法務局による保管

電子署名と口述確認が完了したデータは、法務局(遺言書保管所)のシステムに保管されます。
 従来の紙の自筆証書遺言にあった「紛失する」「誰かに隠される」「改ざんされる」というリスクが防止されます。また、保管証書遺言については、保管の申請をいつでも撤回できるとされており、その場合は遺言自体を撤回したものとみなされます。

  保管証書遺言は法律が成立したものの、現時点ではまだ利用できません。施行まで、数年程度の準備期間があると見込まれます。

 では、今この時点では何もできないのでしょうか。

 もちろんそうではありません。

 今すぐ利用できる制度として、例えば以下の2つがあります。

制度内容状況
自筆証書遺言書保管制度手書きの遺言書を法務局に保管してもらう現在利用可能
公正証書遺言公証役場で公証人と一緒に作成現在利用可能(2025年10月以降、手続きの一部オンライン化済)

 「デジタル遺言が使えるようになるまで待とう」と考えていると、それまでの間に判断能力が低下してしまった場合、いずれの方式でも遺言を残すことが困難になります。

 遺言は、判断能力があるうちに残すことが大前提です。

編集者より
ーEditor’s Wordsー

保管証書遺言の法律が成立した今「遺言を手書きしなければならない」という心理的なハードルは、近い将来下がっていくことが期待されます。
 ただし、デジタル化がすすんで便利になっても、「遺族が困らないための遺産の設計」という本質的な部分は、いつの時代も変わらないと思います。むしろ、手軽に書けるようになった分だけ、「とりあえず書いてみた」という内容が増えることへの懸念もあります。

 遺言の中身の設計(遺留分への配慮、財産の特定方法、付言事項(想いを伝える部分))は、遺された家族の将来を左右します。遺言のことをお考えの方は、まず内容の検討から少しずつはじめてみて、必要に応じ家族や専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

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